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ジルベール…いつも彼らしい顔を描くのに苦労した。勝ち誇る顔、でも不安が隠れていて。その二つのせめぎ合いが出たものがいちばん良い彼の肖像画となる。 タイトル:花模様 二人の会話するシーンが好き。『風と木の詩の』BGは何かとよく聞かれるけど、バイオリンとピアノの掛け合いが会話のように聞こえるモーツァルトのソナタが良い。 タイトル:質問 オーギュスト・ボウ。ファーストネームもセカンドネームもフランス語圏ではありきたりのものにしたかった。連載当時はまだフランスという国は身近でなかったから。タイトル:支配する者 セルジュ・バトゥールは一生懸命だ。でもそれが届かないことも多い。想いがあればすべてが解決するわけではない。 タイトル:黄金の小枝 連載当時はバブル期へ一直線。マンガも右肩上がり。人気連載作品をムック本化してイラストや関係情報を紹介する本が出版された。その時の裏表紙まで一体型の表紙絵。  タイトル:いばらの森 『風と木の詩』本文中の見開きページ。絵としても美しいように見開きのドラマティックな絵を描きたいと想っているけれど、実はあまり上手ではない。まれな成功例。 タイトル:満たされぬ想い 少しパステルに凝っていて、イラストカレンダー用に描いた絵。ホワイトを使うとパステル画が引き締まるので気に入ってよく使った。 タイトル:甘い幻想 『風と木の詩』最終回の最後の見開きページ。『風』と『梢』を配して描きたかった。連載開始第1回の冒頭の詩を入れることが決まっていたので。 タイトル:わが梢を鳴らす風 2003年の個展で描き下ろしたジルベール。次のセルジュと一組になっていて、寮の窓からのぞく2人、というコンセプト。さえずる小鳥に気を引かれるジル。 タイトル:さえずる声 さえずる声にジルベールは窓から身を乗り出す。でもセルジュは動かない。こんなところが二人の差。ジルも人に対してはこんなに素直じゃないけどね。 タイトル:さえずる声

風と木の詩 紹介

物語の舞台は南フランスの寄宿学校。7〜18歳の少年たちが集う学び舎で、二人の少年が出会う。

 ひとりは肌の色が違う転校生セルジュ。もうひとりは学内で問題児とされる美少年ジルベール。白と黒のように違うふたりは、同級の監督生カールによって同室にされる。カールはまじめそうなセルジュによってジルベールが感化されることを期待したのだったが、性的な悪癖があるとされるジルベールは、セルジュがさしのべる手を徹底的に拒絶する。


 …この物語は1976年より「週刊少女コミック」にて連載を開始するが、物語の種は既に1970年に生まれており、実際に連載が始まるまでに6年を費やしている。連載期間は8年、物語はセルジュの死まで続きがあるが、連載自体はジルベールの死によって終えられた。
 もう一つの代表作「地球へ…」とともに第25回小学館漫画賞受賞作品となり、竹宮の代表作となったが、 同時に
この作品は、 タブーとされてきた性の問題を扱った問題作であり、 少女マンガの大きな転換点となった作品でもある。


ブツブツと不平をもらした1ページ劇場


 1973年9月の日付が入った1ページ劇場。1ページ劇場とは、「週刊少女コミック」誌上で、 作者の様々な雑感をエッセイ的なイラストもまじえながら紹介するページ。
 そこで竹宮が爆発的に発したのは、 3年間もお蔵入りしている「風と木の詩」への想いだった。タイトルもすでに決まっており、「風と木の詩」冒頭の50ページは、 すでにクロッキーノート上ではコマの形で出来上がっていた。二人の少年のベッドシーンから始まるこの物語を掲載してもらうため、 竹宮は多くの編集者に見せたが、 ほとんどが掲載することを恐れたという。


以下に1ページ劇場全文を写してみる。つまりこれは『風と木の詩』を絶対に描く、という決意表明なのである。


  『…あーあー ただ まっているだけでは 何事もおこりませぬね。
   私の好きでたまらぬ主人公たちは このまま オクラいりするのでしょうか。
   いえいえ! そのようなあわれなこと!
   思えばまるまる三年 私の胸ひとつに 納まったままなのです。 ああ!
   いかにして世にだすべきや!? 力量のなさもさることながら………ところで
   竹宮惠子はバイセクシュアル趣味であって 決してホモセクシュアルでは ありませぬ。
   つまり 世に恋愛関係は 男と女、女と女、男と男の 三つの組み合わせが
   あってしかるべきだという考え方。私をホモ趣味とお考えちがいの
   ひとたちよ 好きになったなら 男であろうと女であろうと よいではありませぬか?
   ”ジルベール”の名を覚えていてください  きっと描きます!!(執念)1973.9.15 』






最初は読者にさえ嫌われ者のジルベール


 連載を始めた当初、 主人公として設定されたのがセルジュであるため、 読者はジルベールに批判的で好かれる見込みが全くなかった。それでは困るということで、彼の誕生からこれまでを語ることで、読者に少しでもこの変わった人物を理解してもらおうと考え、当初は予定していなかった「ジルベールの章」が生まれた。
 この章ではジルベールという少年の性質がどのようにして生まれ、 どのように彼のプライドが形作られたかが語られる。それは意外にも長いページ数を必要としたが、その章が終わる頃には、 確実に彼を理解する読者が増え、 逆境にあったとはいえ両親に愛されて育ったセルジュに比べ、圧倒的な数の差でファン層を獲得した。ジルベール派かセルジュ派かで、今もファンのあいだでは論争が起きる。




原稿らしさを再現する原画’技術


 ところで、ここに掲示された「風と木の詩」の本文原稿は、すべて竹宮が研究する原画’(ダッシュ)の技術でデータ化されている。セリフの文字が写植で貼り込まれていること、絵の修正部分のホワイト(修正液)が、原稿の経年変化により白く浮き立って見える。
 もちろんこれはきれいに消してしまうことも可能であるが、生原稿の原稿らしさ、経年変化、当時のマンガの印刷手順などを伝える貴重な情報であるため、手描きの線や黒ベタ(塗りつぶし部分)の塗りムラなどと共にそのまま再現してある。


 生原稿とは原稿用紙に手描きで作られているものだ、ということを、しばし味わって見ていただけると嬉しい。




★★★★★★★★ このページは少しずつ記事を増やそうと思っています。お楽しみに! ★★★★★★★★